こんにちは、元スノーボードインストラクターの、らくスノです。
まず結論から知りたい方のために、スタイル別ビンディングの推奨角度の目安表を作りました。
■ビンディングの推奨角度
前足 | 後足 | |
---|---|---|
初心者 | 15~21度 | 9~ー6度 |
グラトリ・パーク | 6~18度 | ー6~ー18度 |
カービング | 15~36度 | 9~27度 |
フリーライド | 18~24度 | 3~ー6度 |
パウダーラン | 15~21度 | 6~ー6度 |
でも、カービング、グラトリ、パウダーラン、パーク…志向するスタイルを極めたいなら、さらに細かく調整する必要があります。
今回の記事ではビンディングの角度の決め方から微調整の方法まで、初心者の方にも分かるように解説していきます。
この記事を最後まで読めば、スノーボードが劇的に滑りやすくなりますよ!
スノーボードの角度(アングル)とは→ビンディングの向き

スノーボードの角度(アングル)とはビンディングの向き。つまり「どの方向に足を向けて滑るかセッティングする」ということです。
スケートボードやサーフィンなどの横乗りスポーツとは違い、スノーボードは足がビンディングで固定されているので、自身のスタイルに合わせて角度を変える必要があるんですね。
では角度を変更するとどうなるのでしょうか。
ビンディングの角度を調整する意味→ボードが操作しやすくなる

そもそも「スノボのビンディングの角度を調整する意味がいまいちよく分からない」という方も多いと思います。
車の運転席を想像すると分かりやすいですよ。
初めて運転する車だったら、シートの角度や前後の位置、バックミラーを調整しますよね。ビンディングの調整もまったく同じ意味です。
つまりスノーボードを操作しやすくするために、角度を調整するわけです。
角度は十人十色、正解はない
ある人は「〇〇がおすすめ」って言ってるし、別の人は「▲▲がおすすめ」って言ってるし…少しyoutubeやブログを見ただけでも、みんな言ってることが違いますよね。
でも、理論的に考えれば当たり前のこと。なぜなら骨格や筋力、体の柔軟性は千差万別だからです。
車のシートやミラー位置だって同じ人はいません。だからその人にとっては合っていても、自分に合うとは限らないのです。
とはいえ、それではいつまで経っても角度は決められないですよね。ご安心ください!次項からは、スタイル別の推奨角度をお教えします。
まずはセオリー通りにビンディングの角度を決めて、滑りながら徐々に自分流へカスタムしていきましょう。
スノーボードの角度は大きく分けて3種類ある

スノーボードの角度は大きく分けて、前ふりスタンス、ナチュラススタンス、ダッグスタンスの3種類があります。
次項から順番にメリット・デメリットを説明していきます。
そもそも設置方法が分からないという方は、以下の記事を参照ください。
→スノーボード初心者でも簡単!バインディングの付け方・外し方
カービングにおすすめの前振りスタンス

■前振りスタンスの有名ボーダー
前足 | 後足 | |
---|---|---|
平間和徳(ラマさん) | 36度 | 27度 |
松本卓(SAJデモ) | 36度 | 27度 |
藤本健二(K&K理論) | 36度 | 24度 |
伊東しんご(伊東流) | 36度 | 24度 |
保田光陽(プロスノーボーダー) | 36度 | 27度 |
菅谷 佑之介(スプレッド) | 27度 | 18度 |
勝呂校長(スクール校長) | 30度 | 18度 |
河合美保(SAJデモ) | 33度 | 27度 |
仁井田薫(ヨネックス) | 33度 | 21度 |
両足とも進行方向にする前振りスタンスは、カービング志向の方におすすめ。前足21~36度、後足9~27度が前振りの推奨角度です。
まず体軸が圧倒的に安定します。
綱渡りやスラックラインをイメージするとわかりやすいと思います。足が綱に対して横より正面を向いたほうが、バランスが取りやすいですよね。
スノーボードも同じ。進行方向に対して正面を向いたほうが体軸が安定するので、ターン時に体を倒してもヤジロベーのように戻しやすい。
また、前後に動きやすいので、荒れたバーンにも強いです。
前振りはドラグしづらいのでより板を立てることができる

また、前振りはドラグしづらいのもメリットが大きいですね。
ドラグとは、ターン時に体を倒した際、足先やビンディングが雪面に当たってしまうこと。減速や転倒の原因になります。
後述するダッグやナチュラルスタンスだと、どうしてもボードの横幅にたいしてブーツがはみ出てしまいます。
前振りスタンスなら、ドラグを心配する必要がなくなります。
デメリットはとにかく重心を保つことが難しい

デメリットを一言で表すと、とにかく体の重心を保つことが難しい。前後に動きやすいということは、重心がずれやすいということとイコールですからね。
重心を保つことができなければ、有効エッジが最大限使えないので、板のズレや転倒の原因になります。
また、足先が正面を向いているとエッジの効きが悪くなります。だから前振りカービングの人は、みんなトーションの反応(エッジの効き)が良くなるように硬いビンディングやブーツを使っているんですね。(ギアが硬ければ重心も動きづらくなりますし)
でも、硬いギアにすると今度は捻ったり曲げたりといったフリースタイル系の動きがしづらいので、結局カービングしかできなくなっちゃうんですよね。
スイッチスタンスで滑りづらいのも、フェイキーを多用する方にとってはデメリットになります。
グラトリ・パークライドにおすすめのダッグスタンス

■ダッグスタンスの有名ボーダー
前足 | 後足 | |
---|---|---|
尾川慎二(スプレッド) | 6度 | ー6度 |
こきっすん | 9度 | ー9度 |
江端翔兵(クロージャ) | 12度 | ー9度 |
中川智貴(クロージャ) | 6度 | ー6度 |
いぐっちゃん | 15度 | ー12度 |
瀧澤憲一(FNTC、スノボー先生) | 12度 | ー12度 |
国母 和宏 | 15度 | ー15度 |
平野歩夢 | 15度 | ー6度 |
続いては両足が逆八の字に開いたダッグスタンスを紹介します。前足6~18度、後足ー6~ー18度がダッグスタンスの推奨角度です。
ダッグスタンスのメリットは、何と言ってもトリックのやりやすさでしょう。
当然ながら横を向いていたほうが、板の反発を使いやすい。さらに板がずらし(回し)やすいので、回転系のトリックで真価を発揮します。
また、フェイキーでもメインスタンスと同じような乗り心地で滑ることができます。グラトリやパークではフェイキーで滑ることも多いと思うので、ダッグスタンスがおすすめです。
センターポジションをキープしやすく重心がづれにくい

ダッグスタンスはひざを曲げて滑走姿勢になっても体の重心がズレにくく、板のセンターポジションを保ちやすいのもメリットです。
「ボードのセンターポジションに乗れる=板の性能が最大限活用できる」ということなので、より深いターン、高いオーリーが可能になります。
踏ん張りやすくエッジが効きが良いので、柔らかいギアとの相性も抜群ですね。
ダッグスタンスのデメリットは体軸を保つことが難しいこと

ダッグスタンスのデメリットは体軸を保つのが(ターン時に体を起こす)難しいことですね。たしかにグラトリやパークランだとそれほど深くターンすることはないのでデメリットは少ないです。
でも、より深いカービングをしようとすると、体軸を保つことが難しくなります。ターン後半で体軸がブレると体勢が戻らないので、上体を使って起こそうとしちゃう人が多いんです。(出尻)

もちろんダッグでもキレのあるカービングは可能ですが、体軸を保つためにはそれなりの練習が必要になります。また、しっかり足首を曲げる必要があるので、硬いギアより柔らかいギアのほうが相性がいいです。
前後に動きづらいので、後傾でノーズ(板の先頭)を浮かせるパウダーランや前足で操作するショートターンが苦手という側面もあります。
足が大きい人はドラグの問題もあります。現状国内ブランドでは27cmくらいまでしかドラグに対応できませんからね。
ドラグ対策については以下の記事を参照ください。
→スノーボード板のワイド(横幅)からブーツがはみ出ても良いの?ドラグの疑問にお答えします!
万能でどんなスタイルとも相性がいいナチュラルスタンス

■ナチュラルスタンスの有名ボーダー
前足 | 後足 | |
---|---|---|
青木玲(スノーボード大学) | 30度 | 0度 |
中井孝治(FLUX) | 21度 | 0度 |
藤田一茂(ゲンテンスティック) | 21度 | 0度 |
天海洋(K2) | 27度 | 6度 |
谷口尊人(ピーカンファクトリー) | 21度 | ー9度 |
吉村美乃梨(オガサカ) | 24度 | 6度 |
月岡雛乃(SAJデモ) | 24度 | 0度 |
ナチュラルスタンスは、前振りとダッグの中間といったところでしょうか。前足は進行方向、後足はあまり角度をつけないスタンスです。
前足18~24度、後足3~ー6度がナチュラルスタンスの推奨角度です。
皆さんのご想像の通り万能に動けるので、カービングやグラトリ、ラントリ、フリーライド、フリーラン、パウダー等…オールラウンドに遊べます。
実際、ナチュラルスタンスはオールラウンダーのライダーが多いですね。ちなみに筆者もナチュラルスタンスです。
朝一のパウダーラン、壁でジャンプ、圧雪バーンでカービング、初心者コースでグラトリ…一つのスタイルにとらわれず、1日でいろいろな遊び方をする方におすすめです。
万能ではあるが中途半端になりがち
カービングは前振りほどやりやすくないし、トリックはダッグほどやりやすくないし…どれも中途半端ではあるんですよね(笑)
つまり、大きなデメリットもないけど、大きなメリットもない。まぁなんでもできる完璧なスタンスはないということです。
ただし、セッティングしだいではかなり乗りやすくなるのもナチュラルスタンスの面白いところ。セッティングに関しては長くなるので、以下の記事を参照ください。
初心者にはナチュラルスタンスがおすすめ
ナチュラルスタンスは初心者の方にもおすすめです。
まず、進行方向を向いているので、違和感なく滑りやすい。また横滑り(サイドスリップ)によるスピードコントロールも容易です。
ゲレンデで座っている時間も長いと思いますが、ナチュラルスタンスなら、足腰に負担もかかりません。
自分の乗りやすい角度に微調整してみよう!

ここまで前振りスタンス、ダッグスタンス、ナチュラルスタンスを紹介してきましたが、「自分流にアレンジするにはどうしたらいいの?」と疑問に思う方も多いと思います。
実は前足と後足では役割が変わってきます。
次項からは前足・後足の役割の違いと、微調整の考え方について説明していきます。
前足は安定性or操作性のバランスで調整

前足は進行方向へ向けて角度をつけるほど板が立てやすく操作性がアップします。また軸が安定するので、深いターンをしても体が起き上がりやすい。
逆に浅い角度にするとトーサイド/ヒールサイドで踏ん張りやすくなるのでグリップ力がアップします。またトリック時に板の反発も使いやすくなります。
たとえば少しグリップ力をアップさせたいのであれば、3度角度を浅くして滑ってみましょう。
後足は自分のスタイルに合わせて調整

後足は前に振るほど前後動が使いやすいので、カービングはもちろん、パウダーランやショートターン、コブなどで柔軟に対応できます。荒れたバーンにも強くなります。
マイナス方向へ振ると、フェイキーで滑りやすくなります。また板がずらしやすいので、回転系トリックがやりやすい。さらに重心がズレにくくなるので、センターを保つのが苦手な方は少しづつマイナスに方向に振って調整してみましょう。
ビンディングの付け方・外し方

ビンディングの取り付け方は超簡単!用意する道具はプラスドライバーだけです。
取り付ける手順は以下のとおりです。
- 取り付ける位置を決める
- 取り付け角度(アングル)を決める
- ネジを取り付ける
「もうちょっと詳しく教えてほしい」という方は、以下の記事も参照ください。
→スノボ初心者でも簡単!バインディングの付け方・外し方完全ガイド
初心者でもできる!スタンス幅の調整方法

スタンス幅とは、両足のビンディング間の長さのこと。なぜスタンス幅を調整するかというと、幅を広げたり狭めたりすることによって操作性が変わるんですね。
基本的には以下の早見表を元にセットすれば問題ありません。
身長 | スタンス幅の基準値 |
---|---|
160cm未満 | 48cm |
160cm〜 | 50cm |
165cm〜 | 52cm |
170cm〜 | 54cm |
175cm以上 | 56cm |
ただカービングやグラトリなどすでにスタイルが決まっていて、さらに精度を上げたいならスタンス幅にもこだわるべきです。
スタンス幅について、さらに詳しく知りたい方は以下の記事も参照ください。
【まとめ記事】スノーボードのセッティング箇所一覧
セッティング箇所 | 重要度 | 効果 |
---|---|---|
①ビンディングの角度 | 高 | 操作性がアップ |
②スタンス幅 | 中 | ターンやトリックの精度がUP |
③センターリング | 高 | ボードの中心に乗れるようになる |
④セットバック | 中 | 浮力アップ・転倒しづらくなる |
⑤フォワードリーン | 中 | ヒールの反応がアップ |
⑥ハイバックローテーション | 低 | パワーの分散を防止 |
⑦ストラップ | 低 | パワーの伝達力アップ |
スノーボードは上記の7箇所がセッティングできます。
自分のスタイルやコンディションに合わせて調整すると、ターンやトリックの精度はもちろん上達速度も上がります。
以下の記事では初心者の方でも分かるように解説してますので、ぜひ1箇所ずつチェックしてみてください。
元イントラが厳選!スタイル別おすすめの板92選

以下の記事では筆者の友人であるスノボショップ店長やライダー、イントラさんの意見を総合して、
- グラトリにおすすめの板
- カービングにおすすめの板
- ラントリにおすすめの板
- 軽量な板
- オールラウンドに乗れる板
- パウダーにおすすめの板
…等、ジャンル別のおすすめ板をまとめています。
具体的なモデルを検討したい方は以下の記事を参照ください。
→元イントラが厳選!ジャンル別おすすめのスノーボード板92選!
まとめ
角度って答えがないので難しいんですよね。でも、明日の滑走に向けてセッティングを考えるのも、スノーボードの楽しみだったりします。
まずは今回ご紹介した推奨角度をふまえてセッティングしてみましょう。
そして、徐々に自分の滑りやすいセッティングにカスタムしていきます。
何度か試すうちに、きっと自分にベストな角度がわかってくるはずです。
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