こんにちは、元スノーボードインストラクターの、らくスノです。
たとえば初めて運転する車だったら、バックミラーや背もたれを調整しますよね。
スノーボードにも同じことが言えます。
セッティングが合っていないと、コントロールしづらかったり上達の妨げになることも…
せっかく実力があるのに、セッティングのせいでうまく乗れないのはもったいないですよね。
今回はスノーボードのセッティング方法を、初心者の方でもわかるよう超簡単に説明します。
この記事を最後まで読めば、劇的にスノーボードが滑りやすくなりますよ!
目次
スノーボードのセッティングの重要性

スノーボードは「バインディングのセッティングが重要!」と言っても、ピンとこない方が多いと思います。
車を想像すると分かりやすいです。初めて運転する車だったらシートやミラーを調整しますよね。
たとえプロドライバーでも、調整せずに運転すれば本来の実力を発揮できません。
ビンディングも一緒。自分にとってコントロールしやすいようにセッティング(調整)しないと、乗りづらかったり、上達の妨げになってしまいます。
具体的にはバインディング本体のセッティングとボードに設置時のセッティングがあります。次項から詳しく説明させていただきます。
まずはバインディング本体の調整!5ヶ所セッティングすればOK

まずはボードに設置する前に、バインディング本体のセッティングからはじめてみましょう。
とはいえ、なにも難しいことはありません。各パーツを自分にとってベストな位置にセットするだけです。
調整するのは5ヶ所。
- フォワードリーン
- ローテーション
- ガスペダル
- ストラップ
- ベースプレート
まるでドラクエの呪文…(笑)
でも専門用語まで覚える必要はないので安心してください。次項から順番にセッティング方法を説明させていただきます。
※ブランドやモデルによっては調整できない機能もあります。
エッジへの反応がよくなる!フォワードリーンの調整

フォワードリーンの調整とは、ハイバック(バインディングの背もたれのような部分)の角度を変える事です。
フォワードリーンを鋭角にすると、ブーツとバインディングの隙間が無くなりヒールエッジへの反応が良くなります。
たとえばヒールターン(かかと側ターン)時に、板が立てやすくなるというわけです。
また常にひざを曲げた姿勢になるので、滑走時も正しいポジションが取りやすいというメリットもあります。
ネジを緩めて金具を前後する

フォワードリーンはハイバックの下部にパーツがあるので、ネジを回して調整します。
ほとんどのモデルはネジを緩めて金具を前後すると角度が変わるようになってます。
フォワードリーンは後ろ足から入れてみよう

フォワードリーンは後ろ足のみに入れるのがセオリー。なぜなら滑走姿勢(ひざを曲げた状態)になったとき、前足より後ろ足のほうが足首が曲がるです。
当然足首が鋭角に倒れるほど、ハイバックとブーツの間に隙間ができます。この隙間がターンのもたつきや不安定さを生むのです。
後ろ足にフォワードリーンを入れることで、ハイバックとブーツの隙間がなくなり、反応・安定性が増すというわけです。
21度以上前ふりする場合は前足にもフォワードリーンを入れてみる

「では前足にはフォワードリーンをいれないのか?」と言われれば、必ずしもそうではありません。
前足は進行方向に振るほど、ヒールエッジの効きが弱くなります。ですので、21度以上前振りする方は、1メモリずつフォワードリーンを入れてもいいです。
実際、有名プロのラマさんは、前足36度でフォワードリーンをMAXまで入れてます。
フォワードリーンのデメリット

とはいえフォワードリーンにもデメリットが無いわけではありません。
まず足の可動域が制限されるので、グラトリやパークメインのボーダー向きではありません。体を捻ったりノーズ/テールに体重を載せるといった動きがやりづらくなりますからね。スイッチでも滑りづらくなります。
また、常にひざを曲げた状態になるので、疲れやすいというデメリットもあります。
いずれにしろ板やビンディングによっても、どれだけフォワードリーンを入れるかは変わります。正解はないので、ぜひ前項のセオリーを参考に色々試してみてください。
ひざを内側に入れやすい!ハイバックローテーションの調整

ローテーションとは、ハイバックのサポート位置を変えることです。
サポート位置を変える理由は2つあります。
■ひざを内股に入れやすい
スノーボードは内股のほうがボードコントロールが容易です。
ローテーションを調整することで、ひざを内股に入れやすくします。
■ヒール(かかと)へ力が伝わりやすい
力が適切にハイバックへ伝わるので、トリックやターンがしやすくなります。
逆にハイバックローテーションが適切な位置になっていないと、力が分散しボードが思ったように動いてくれません。
ハイバックローテーションの調整方法

ローテーションはハイバックの付け根部分のネジ穴を前後して調整します。
一部ブランドはドライバー不要、ツールレスでセッティング可能です。
基本的にハイバックローテーションはエッジと平行でOK

ローテーションは基本的に、上から見た時に、ハイバックと板のエッジが平行になるよう調整します。
初心者・初級者の方やグラトリ・パークなどフリースタイル志向の方は、平行でOKです。
内側にローテーションを入れるとカービングしやすい

がっつり前振りで滑っている方は(前36度後27度など)、ローテーションを内側に入れるとよりヒールエッジの反応が良くなります。
両足前振りスタンスはヒールの反応が弱いですが、内側にローテーションすることで補うことができます。
そのかわり足の可動域が狭くなるので、カービングのようにある程度決まった動きをするスタイル向きです。
様々なポジショニングをするラントリ・フリーライド志向の方であれば、平行で問題ありません。
踏み込む力がアップする!ガスペダルの調整

ガスペダルはつま先のプレートのことです。※かかと側を調整できるモデルもあります。
ガスペダルが出過ぎているとドラグの原因に、引っ込み過ぎているとトーサイドターン(つま先ターン)の時に力がうまくボードに伝わりません。
ガスペダルははめるだけで調整できる

バインディングの裏側を見ると、写真のようにはめるだけで調整できるようになってます。
ほとんどのモデルは手で取り付け、取り外し可能なので、ブーツに合わせて調整してみましょう。
ブーツのつま先よりも少し短いくらいでいいです。
またドラグの原因になるので、伸ばした時に板からはみ出ないよう注意しましょう。
※ドラグとはターンした時、バインやブーツが雪面に接触すること。
パワーの伝達力アップ!ストラップの調整

まずはアンクルストラップ(足首のストラップ)とトウストラップ(つま先のストラップ)の長さを調整しましょう。
ストラップが中心にきてないと、ターンやトリックの時パワーが分散してしまいます。
また足首の痛みや、怪我の原因になることも…
ストラップがブーツの中心にくるように通す穴を変えてみる

やり方は簡単!ストラップがブーツの中心にくるように通す穴を変えてみてください。
ドライバーで簡単に取り付け、取り外しできます。
※モデルによっては、ドライバーを使用せずに調整できるバインディングもあります。
あえてストラップの中心をずらすことでひざを入れやすくする

ひざを内側に入れやすくするため、あえてアンクルストラップをセンターからずらして装着しているボーダーもいます。
ご自身の体重の乗せ方を心得ている中上級者の方は、あえてストラップをずらすセッティングをしても面白いかもしれませんね。
思い通りにコントロールできる!ベースプレートの調整

ベースプレートとは、バインディングの足置き部分のこと。
ベースプレートに対してブーツが中心にこないと、板にうまく力が伝わらずターンやトリックの妨げになります。
まずはブーツをバインディングにはめて、中心になっているか確認しましょう。
ストラップのネジ穴を前後して位置を変える

中心がずれている場合は、根本のストラップの穴を前後して調整します。
一部ブランドはドライバーなしでも調整可能です。
バインをスノーボード板に設置!3か所セッティングすればOK

さて、バインディングのセッティングを終えたら、いよいよ板に設置します。
バインディングと板は3か所セッティングすればOKです。
- スタンス幅
- 角度(アングル)
- セットバック
こちらも呪文のようですが、初心者の方にもわかりやすく解説します。
※取り付け方法が分からないという方は、以下の記事も参照ください。
→日本一分かりやすい!スノーボードバインディングの付け方教えます
乗り心地が劇的に変わる!角度の調整
左足 | 右足 | |
---|---|---|
初心者 | 18~30度 | 9~24度 |
グラトリ・パーク | 9~18度 | 0~ー15度 |
カービング・ラントリ | 24~36度 | 9~27度 |
オールラウンド(フリーライド) | 18~24度 | 3~ー6度 |
パウダーラン | 15~36度 | 6~ー6度 |
ビンディングのセッティングでもっとも大事なのが角度(アングル)ですよね。角度しだいで、スノーボードの乗り味が劇的に変わってきます。
推奨角度は上記を参照ください。

ちなみに向かって左側がマイナス方向、右側がプラス方向です。
初心者やターン重視ならレギュラー、トリック重視ならダッグスタンス

まず角度には両足が正面を向いたレギュラースタンスと足を八の字に開いたダックスタンスがあります。
角度には両足が正面を向いたレギュラースタンスと足を八の字に開いたダックスタンスがあります。
そして、普通にターンするだけだったらレギュラースタンスのほうが圧倒的に滑りやすいんです。理由は3点。
- そもそも人間は正面を向くことに慣れているので、レギュラースタンスのほうが違和感がない
- 出尻ターンになりにくい(姿勢が安定する)
- 前後へ荷重しやすいので、コブや荒れたバーンに強い
だから初心者の方やカービングスタイルの方には、両足が正面を向いたレギュラースタンスがおすすめなんですね。
ダッグスタンスはスイッチで滑りやすい
ダッグスタンスの一番のメリットは、スイッチで滑りやすいということです。セオリー通りで行けば、トリックやスイッチを多用される方はダッグスタンスがおすすめです。
ツインチップのボードと相性が良かったり、スピン系トリックがやりやすいのもダッグスタンスの特徴です。
ただし、スイッチをしないカービング勢でも、「単純に滑りやすいから」という理由でマイナス方向に振っている方もいます。前後の可動域に制限がある分、逆に重心も安定するので、オートマチックにカービングできると言うわけです。
さらに詳しく知りたい方は、以下の記事も参照ください。
スタンス幅の調整!基準値早見表作りました
身長 | スタンス幅の基準値 |
---|---|
160cm未満 | 48cm |
160cm〜 | 50cm |
165cm〜 | 52cm |
170cm〜 | 54cm |
175cm以上 | 56cm |
よく「スタンスは肩幅を基準に!」なんて言われますが、計測位置で誤差が出やすいですし、一人だと測ることができませんよね。
ご安心ください、わざわざ肩幅を測らなくても上記の表を目安にすればOKです。上の表は日本のプロライダーやイントラさんの平均値から算出してます。
海外だとスタンス幅58cm以上に設定しているプロもいますが、日本だと180cm以上の高身長の方でも56cm以上に設定している方はほとんどいないです。
女性も同じ。身長150cm未満のライダーさんでも、48cmより狭める方はほとんどいません。
ですので、基本はスタンス幅48〜56cm以内で収めるのがおすすめです。

ちなみにバインディングの両足のディスクの中心が計測の起点になります。
浮力やコントロール性能アップ!セットバックの調整

セットバックとは有効エッジの真ん中よりテール側(後方)に重心をずらすことです。
そして「前ふりスタンスならセットバックを入れる、ダッグスタンスならセットバックを入れない」というのがセオリーです。
やり方は簡単、左右のビンディングのネジ穴を、同じ数だけ後ろにずらせばいいだけです。
セットバックについてさらに詳しく知りたい方は、以下の記事も参照ください。
→スノボのセットバックって何?→重心を後ろへずらすことで浮力やコントロール性能がアップ
センターリングの調整!ブーツが板の中心に設置されていればOK

バインディングの設置が終わったら、ブーツを乗せてセンターリングを確認してみましょう。ボードを横から見たとき、ブーツが前後に出すぎてないか確認することをセンターリングと言います。
当然ながら前に出すぎているとヒールターン(かかと側)がもたつくし、後ろに出すぎているとトーサイドターン(つま先)ターンがもたつきます。
単純に足先がはみ出すというデメリットもありますね。
基本はブーツがボードのセンターにセットされていればOKです。
中上級者向けセンターリングの調整

前項ではブーツの中心と板の中心が合っていればOKとお話しました。でも、厳密にはブーツの中心がセンターリングではないんですね。
なぜなら、人間の足は母指球・小指球・かかとの3点を結んだ点が中心となるからです。足を基準とすると、ブーツのセンターはやや下がります。
では、なぜ前項ではブーツの中心をセンターとしたかといえば、初級者の方は、ヒール(かかと)が踏みやすくなるからです。
しかし、ある程度板が倒せる中上級者になると、ブーツ基準のセンターリングは都合が悪い。なぜなら、ヒールの導入が早いのに対して、トー(つま先)の導入が鈍重だからです。
ですから、ある程度ボードが踏める中上級者の方なら、足を基準としたセンターリングをしましょう。詳しくは以下の記事も参照ください。
→スノーボードバインディングの付け方・外し方とセンターリングの調整方法
ボードの横幅から足がはみ出る時の解決方法

「板に設置したら、ブーツがボードの横幅からはみ出るのですが…」
ターン時に足先やビンディングが雪面に当たることを業界用語でドラグ(drag)といい、減速や転倒・バランスを崩す原因となります。
がっつり前ふりセッティング(前36度、後27度等)以外の方がカービングをやろうとすると、ドラグ問題は切っても切り離せないですよね。
まずドラグにはブーツドラグとビンディングドラグがります。ブーツドラグの解決方法は、ずばり太い板に乗るしかありません。
ビンディングドラグの解決方法は以下のとおりです。
- プレートでビンディングの高さを底上げする
- セットバックを入れる
- ヒールカップが高いモデルを選ぶ
- リアエントリービンディングを選ぶ
- トーストラップの被せ方を工夫する
説明すると長くなるので、詳しくは以下の記事を参照ください。
→スノーボード板のワイド(横幅)からブーツがはみ出ても良いの?ドラグの疑問にお答えします!
カントのメリット→強く荷重できる、デメリット→動きが制限される

カントとはビンディングのベースプレートに斜度をつけて、ひざを内側に入れやすくする機能のことです。
カントにより強制的にひざを内側へ入れることで、より強いエッジングが可能になります。
ただし、結論からいえばカントは必ずしも必要なものではありません。
たとえばアルペンとかテクニカル・カービングのように一定の動きをする競技なら、使用すると大きなメリットがあります。
でも、可動域が狭まるのでグラトリ、ラントリ、パークスタイルの方には向きません。
カントのメリットは簡単に確認できる

実はカントのメリットは簡単に確認できます。
- まずはその場で立って踏ん張ってみてください。
- 次に内股にして再度踏ん張ってみましょう。
あきらかに内股にしたほうが足裏に力が入りますよね。
人間は骨格上、内股のほうが力が入りやすくなります。
この内股を自然にできるようにするのが、カントの機能なんです。
カントのデメリットは可動域が制限される
カントを入れるとひざの可動域が制限されます。要は動きづらくなるってことですね。
たとえばカービングのように可動域が一定なら、あまりデメリットは感じません。
でも、グラトリやジブ・キッカーのようにフリーな動きをする競技では、少しトリックにもたつきを感じることがあります。
そもそもカントの効果が絶大であれば、すべてのブランドがデフォルトで採用しているわけで。
この事実からも、カントのデメリットの存在を如実に表していますね。
後付けカントはパウカントシステムとユニバーサルカントが有名
有名どころだと、パウカントシステムとユニバーサルカントの2種類があります。
いずれもバインディングと板の間に挟んで角度を調整します。
もしもカントの使用感が気になる方は、後付けで試してみてはいかがでしょうか。
パウカントシステムはグラトリ・パークにおすすめ
トリックメインの方にはパウカントがおすすめ。
パウカントは柔らかい素材でできたカントなので、グラトリやパークで使用しても動きが阻害されづらいです。
カラーバリエーションが豊富なので、板のアクセントにもなりますね。
ユニバーサルカントはカービングにおすすめ
通称ユニカンはカービングユーザーにおすすめ。
サークルカントは円を回すことで角度を自在に調整することができます。
その日の雪質やバーン状況に合わせて調整できるのが魅力です。
【番外編】ダリングしないと転びやすくなるよ!

ダリングとは滑るときに使用しない余分なエッジを削ること。
なぜダリングするかというと他人の板を傷つけたり、雪面のちょっとした凹凸に引っかかり転倒してしまうからなんです。
難しく感じるかもしれませんが、ヤスリさえあれば5分でできます。
せっかくセッティングにこだわっているなら、ぜひダリングも実施してみましょう。
詳しいやり方は以下の記事を参照ください。
→スノボ板にダリングしないと?→転びやすくなる…5分で終わるからやってみよう
まとめ
まずはバインディングを5ヶ所調整してみましょう。
- ストラップ
- ガスペダル
- フォワードリーン
- ローテーション
- ベースプレート
バインディングの調整が終わったら、
- スタンス幅
- セットバック
- 角度(アングル)
上記をセッティングすれば完璧です。間違いなく調整前より滑りやすくなっているはず!
それぞれの調整幅は、好みやスタイル、骨格によっても違います。
同じ競技のプロでさえ、人によってまったく違いますからね。
どれが正解ということはないので、ベストなセッティングが見つかるようにいろいろ調整してみてください!